*ケーニヒスベルクから見てベルリンは西側だ!と勝手に解釈してみて、ドイツのことは分断前からも「ヴェスト」呼びになってます。

 

 

再会と出会い

 

 

 



「イタリアが軍事同盟を破棄して宣戦布告をして来ましたよ」
「さすがイタリアちゃん、身の振り方は熟知してんじゃねぇか」
「褒めてどうするのですか! 同盟破棄で私たちに宣戦布告ですよ! 裏切り行為ですよ!」
「それがイタリアちゃんの処世術だろ。今更じゃねぇか」
「あーもう、話しになりませんね。イタリアは今後は敵です、良いですね」
「分かってる分かってる」
 鬱陶しそうにプロイセンは片手をひらひらと振ってみせる。不快そうにオーストリアが眉を顰めた。
 人払いを済ませた作戦本部の会議室で、オーストリアとプロイセンは広げた地図を前に、今後の対策についての話をしている最中だ。

「イタリアが宣戦布告だと? イタリアと言えばあのローマ帝国の子孫だというじゃないか」
「お前はなんでそうローマ帝国に拘るかな」
 ノックと共にドアを開け入って来たドイツの言葉にプロイセンが微かにだが眉を寄せる。
「是非とも、イタリアと戦う時は俺に行かせてくれ」
「イタリアなんか放っておきなさい」
「イタリアちゃんは無害無害、気にすんな」
 出陣の申し出が速攻で却下されてしまい、ドイツは露骨に不愉快そうな顔を見せた。
「放っておけとは何だ…!」
「イタリアは味方であろうと敵であろうと戦力外です。イタリアなんかに構っている余裕など無いと言っているのです。まずはロシアでしょう」
「すげぇ言われようだな、イタリアちゃんも」
「ローマ帝国の子孫が戦力外だと? どういう意味だ」
「そのままの意味です! 貴方もデータ上ではイタリアの戦歴を見ているでしょう! いいから、イタリアに拘るのはお止めなさい。また身の破滅を招きますよ!」
「…また?」
 ドイツの小さな問いに、オーストリアは苦虫を潰したような表情を作った。
「……かつてのドイツの地に築かれた国々が辿った道です。貴方も同じドイツの地に君臨する国であるなら、肝に銘じておきなさい」
 オーストリアの言わんとすることが今一つ理解出来ずに、ドイツは斜め向かいに立つプロイセンを見遣った。が、プロイセンはプロイセンで微妙な顔をしたままドイツの方を見ようともしなかった。
 イタリアに執着し過ぎて自らの破滅を招いた国…。ドイツことドイツ帝国が築かれる遙か以前にこの広大な地を支配していた、神聖ローマ帝国のことを言っているのだろうか。
 神聖ローマ帝国…。この地に国として生まれたドイツにも、なんとなく朧気ではあるが神聖ローマという者のイメージが残っていた。時々、自分の知らない光景が脳裏をよぎるのだ。これが、受け継ぐ歴史というやつなのか。そう思っていた。他の国の化身たちにも同じ様な感覚があるのかと勝手に思っていたが、何となく確認する気が起きないまま今まで来てしまっていた。
 ただし、あくまでも朧気なイメージしか自分の中には無く、彼の国の詳細なデータは、人間たちの残した書物で見聞きしたことでしか補えていない。オーストリアもプロイセンも彼の国については、満足に語って聞かせてくれたことなどなかった。
 読んだ書物でやたらと印象に残っている事柄は、唯一つ。この地に生きた人間たちは、誰も神聖ローマ帝国などと大層な名で呼ぶことはなかったという。この地に生きた人間たちから呼ばれていた名は、「ドイツ王国」。
 同じ、ドイツという名を持つ国。ドイツという地に築かれた国であるのだから、何ら不思議がることも無いのかもしれない。
 しかし、何とも言えない奇妙な気分に陥ってしまい、最近では神聖ローマ帝国に関する書物はほとんど開いてはいなかった。



 戦況はあまり芳しくない状態が続いていた。
 プロイセンは本格的に参戦してきたアメリカを抑える為に奔走していたし、オーストリアもイギリスやロシア相手に手こずっている様子だった。
 かく言うドイツも、戦力外と見なしていたイタリアが予想に反して攻め込んできた為に、対イタリア戦に赴いている最中だった。
「イタリアちゃんは適当にあしらって、適当に叩いておけばいいからな! 間違っても叩き潰すなよ!」
「イタリアなど放っておきなさいと言っているでしょう!」
 プロイセンとオーストリアは最後までそんなことを言ってくれていた。
 ドイツは現在、ドイツの占領下になっている国とイタリアとの国境越えをしているところである。
 オーストリアとプロイセンの言っていた意味がちょっとだけ分かった気がした。ちょっとだけ。
 出くわすイタリア兵と思わしき者たちはドイツ軍服を着たドイツの姿を見ればそそくさと逃げ出して姿を消していく。
 初めこそ、何かの罠かと思ったが、それにしても昼飯代わりにヴルストを食べながらの国境越えを難なくこなしてしまった。
「ヴルスト食べながら国境越えが出来るとは思ってもみなかったな…」
 そして、見つける山中にあるには不自然な怪しいトマトを入れる木箱。
 不自然にもほどがあるだろう、これは。
 今度こそ罠か!?
 そう思い、慎重に木の枝で木箱を突ついてみる。途端に中から奇妙な声が。
「やあ! 僕はトマト箱の妖精だよ! 君と友達になりに来たんだ…!」
「……」
 ドイツは木箱に軽く蹴りを入れる。爆発などの危険性は無いようだが…。
「止めて! 乱暴に扱わないで!」
「中に人がいるようだ…」
「中に人なんていないよ! 僕はトマト箱の妖精だってば! 止めて、開けないで! 乱暴止めて!」
 思った以上に頑丈に閉じられている木箱の蓋を、ドイツは力任せにこじ開けようとした。
「怪しい奴め、姿を見せろ!」
「やーめーてー! 僕はトマト箱の妖精だってば!」
 バキバキと派手な音を立てて木箱の蓋が外れる。力任せにやった反動でドイツは木箱の蓋を抱えたまま後ろに倒れ込んだ。
 中から聞こえてくる悲鳴。
「ごめんなさい、トマト箱の妖精だなんて嘘なんだ。俺、イタリアだよ。めちゃくちゃ弱いよ!」
 起き上がり、ドイツは箱の中に手を突っ込む。そして、中のイタリアと名乗る男の襟首を掴み、持ち上げた。
「ぎゃああああああ!!! 嘘付いてごめんなさい! 俺、童貞だし、殺しても楽しくないよ! そうだ俺、バイエルンに親戚がいるんだ…!」
 なんだ、こいつは。騒々しいにもほどがあるだろう。
 奇妙な生き物を見るような目で、ドイツは掴み上げたイタリアという男を眺める。
「あ、お前、ドイツだろ! プロイセンと一緒にいるところを見たことあるよ! プロイセンって良い奴だよね…!」
「お前は、本当にあのローマ帝国の子孫なのか?」
「え? なに? お前、ローマ祖父ちゃんのこと知ってるの!?」
「ローマ祖父ちゃん…。ローマ帝国は俺も少なからず尊敬をしている…」
「えええええ? なんだよぉ、お前良い奴じゃん! 心配して損したぁ」
「あのローマ帝国の子孫が、お前だと?」
 ドイツは慎重に掴み上げた男を見つめながら、手にしたライフルの先でその顔を突ついてみた。
「ぎゃああああああ! ごめんなさいごめんなさい! 殺さないでー! 何でもするからーーーー!」
 途端に泣きわめくイタリア。

 この騒々しい出会いが、その後のドイツの人生を変えるほどの影響力を持つとは、この時は思いもしなかったのである。



 イタリアを捕虜にした。
 そう本部に戻ってプロイセンとオーストリアに伝えれば、両者とも固まってしまった。
「なぜ、捕虜など面倒な真似を…」
「あーあ…」
 敵を殺さずに捕虜にするのは戦場では当たり前な行為のはずだが、なんだ、この二人の反応は。
「俺は、何か間違えたというのか?」
 解せない、という顔のドイツに対して、先に動いたのはプロイセンだった。ドイツの両肩に手を置き、
「よし、我が弟ヴェストに命じる。今後のお前の任務は捕虜イタリアちゃんの見張りだ!」
「はぁ!?」
「俺様はアメリカの坊やを相手にするのに忙しい。そこの腐れ坊ちゃんもイギリスの野郎の相手で忙しい。従って、捕虜イタリアちゃんの見張りはお前しかいない!」
「見張りなど、その辺の部下に…!」
「イタリアちゃんはあれでも歴とした「国」だぜ。国の相手を部下に遣らせるのか?」
「う…」
 プロイセンの言うことがまともなのかおかしいのか判断できずに、ドイツは言葉に詰まる。良いように言いくるめられているだけのような。
 オーストリアを見れば、普段の仲の悪さはどこへやら、プロイセンの言葉に頷いているではないか。
「この戦況下で、俺だけが戦線離脱するというのか!? 俺は最前線で戦いたいと常々言っているだろう!」
「捕虜の見張り、立派な仕事だぜヴェスト」
「そうです。貴方が捕虜にした「国」です。貴方が責任を持って見張りなさい」
「―――…、」
 見事なまでに押し切られてしまった。自分でも押しに弱いにも程があるだろうと思わずにはいられない気分である。
 年若いせいなのか、どうやっても兄貴分に当たる彼らには逆らえない、というのも大きいかもしれない。




 イタリアを見張り始めて一日が経過。
 非常に暇である。
 戦闘意欲の無さは分かっていたが、牢からの脱走意欲というものも皆無らしかった。
「お前、ここから逃げようとは思わないのか?」
「え? 何で? だってここ寒くないし、ご飯も出るし、ここのご飯は食えないほど不味くないし、食べれる味だし、文句無いよー」
「文句ある無しではなく、軍人としてだな…!」
 ドイツの説教じみた発言がイタリアの腹の音によって見事に遮られた。
「へへへへ…。お腹空いちゃった」
「……飯の用意をしてくる」
「わぁ! やったご飯だ! あ、俺さ、パスタ食べたいんだけど――、」
「パスタなどあるか! ドイツ料理で我慢しろ!」
「ちぇっ、またあのぐちゃぐちゃごつごつジャガイモかぁ。ま、いっか。あれも食べれない味じゃないし」
「ごつごつ…!? お、おおお前は…! この状況下で、飯の話しかしないのか!?」
 ドイツの怒声が響き、イタリアが「ひぃ!」と飛び上がる。
「うわー! ごめんなさいごめんなさい! ごつごつとか言ってごめんなさい! あれ以上不味く作らないでー!」
「な、……あれ以上、不味く…だと? あれは、俺の手料理で、普通に俺たちの食ってるものだ…。別段、不味く作ってるつもりはない…ぞ」
 ふるふると拳が震える。鉄格子を挟んでいるので殴ることが出来ないのがせめてものだった。
「えええええ?? あれ、お前が作ってくれてたの!? なんだよ、もしかして、お前ってすげぇ良い奴だったりするの!?」
 もうこれ以上は耐えられないとばかりに、ドイツは地下牢から出てしまう。
「あ、待って! 本当に悪気は無かったんだってばー! 料理ももう少し香辛料使ったらもっと美味しくなると思うんだよー!」
 そんな緊張感の欠片も無い言葉が地下から響いてきた。


 料理くらい部下を数人配置させて作らせればいいものを。自分でもそう思うのだが、何せ相手が「国」ということで部下すらも遠ざけてドイツ一人で本当に見張りに就いていたりする。
 そうした理由は、もう一つあったが。
 どうしても、あのローマ帝国の孫であるイタリアという奴をじっくり観察してみたかったのだ。そして、これは早々に後悔した。

「飯だ」
「あ、良い匂いがする! 何々? もしかして、そっちのってデザート!? うわ、マジで!?」
 苛立ちのまま憂さ晴らしをするように作ってしまった大量のクーヘン。あまりの量にこっちにも持ってきてしまったが、やはり早々に後悔した。
 顔が紅潮するのが自分でも分かる。
「うっわー! 俺、こんな良い待遇受けたの始めてだー!」
 捕虜に好待遇も無いだろう。自分では普通にやってるつもりなのだが、やはりやり方が違うのか。
 捕虜の取り扱いマニュアルとかは無いのか!?
 なぜだ。なぜ、何をやってもこのイタリアという捕虜を喜ばせてしまうことになっているんだ。
 もう、頭を抱えて蹲りたい気分だった。
「あああああ! うるさい! いいからさっさと食え!」
 入り口の鍵を開け、料理を運び入れる。ここで投げ込むとかやってみせれば幾らか脅しの効果は得られたのだろうか、とも思うが、貴重な食料を粗末には出来ない。その貴重な食材を使って戦中に大量のクーヘンを作ってしまったドイツが言えた義理でも無いが。
「うっわー! このデザートすっげぇ美味しい! 何だよ、お前ってお菓子作り上手いじゃん!」
 捕虜から菓子作りを手放しで誉められてしまった。
 もう、穴掘って埋まりたい。
 無言のままに鉄格子の入り口を閉め、向き合う様にして置かれた椅子にドイツは腰掛けた。
 脇に置かれたテーブルにはまだ残ってるクーヘンたち。夕食と夜食代わりにこれを食べ続けようと思いここに持って来たわけだが。
 目の前の捕虜からクーヘンを絶賛されながら食べるのは、非常に消化に悪い作業に思えて仕方がなかった。



 見張りに就いて二日目。
 見張りなど必要ない。すでにそう判断しても良さそうな状況ではあった。
 こいつはここに放って一度本部に戻るか?
 ついついそんなことを考えてしまうのは、もう仕方がないだろう。

「ねぇ…」
 夕食も済み、昨日と同様に上階に戻って仮眠でも取るかと支度をしているところに声が掛かる。
「なんだ?」
「あの…さ。今日も上に戻っちゃうの?」
「ああ。俺の仮眠室は上にあるからな」
「そこにも、見張り番用のベッドあるよ?」
 そう指さされ、ドイツは片隅に申し訳程度に設置されたベッドを眺めやった。
「そうだな。部下たちはここで休みながら見張っているらしい」
 それがどうした?と目線を向ければ、イタリアはひどく寂しそうな顔をしてみせた。
「一人で寝るの、寂しいな…って」
「――、…この、戦場下で、何を悠長なことを…、貴様は!」
「うひぃ! ごめんなさいごめんなさい!」
 ドイツの怒鳴り声には慣れないようで、イタリアは頭を抱え込む仕草をする。
 そこまで怯えられると返って何も言えなくなってしまうドイツは、黙って背を向けてしまう。そのまま上階へと行ってしまった。
 小さくだが、悲しげに啜り泣くような声が下から聞こえた気がした。



「あー、その…。お前もシャワーくらい浴びたいのなら、その、使わせてやらんことはないが」
 階段を下りながらそう言ってくるドイツの声にイタリアは両膝に埋めていた顔を上げた。
 まさか戻って来るとは思わなかったので、驚きで声が出なかった。
 気まずそうな顔をしながら、シャワーを浴びたばかりらしいドイツは、軍服の上着を着ずに濡れた髪をタオルで拭きながら鉄格子前の椅子に腰を掛ける。
 普段はオールバックにセットされていた前髪は下ろされ、幾分か柔らかく幼い印象を与えた。
「…え?」
 ひどく、幼く見えた。ひどく懐かしい面影を、垣間見た気がした。
「…え? な、んで…? そんな…のって…」
「…?」
 イタリアの狼狽した反応に、ドイツは怪訝そうに眉を寄せる。
「おい。シャワーは使いたいのか? どうなんだ?」
 ドイツの呼びかけにイタリアはびくりと肩を振るわせた。そこまできつい言い方をした覚えはないのだが、とドイツは内心へこみそうになる。
「ええと、シャワー…、シャワー使わせてくれるの!? やったー! お前って本当に良い奴じゃん!」
 必死にテンションを上げる仕草があまりに空々しかったが、ドイツは何も言うことが浮かばずに、無言のまま鉄格子の入り口の鍵を開けた。
「シ、シャワーってどこでありますか!」
 場所を聞くにも、ドイツの方は見ないようにするイタリア。
 何だろうか、いったい。
 本当に、このイタリアというやつは訳が分からないな。そう口の中で呟く。

 あくまでも捕虜という身分なので、すぐ側で見張ることになる。
 プロイセンたちの反応からして、イタリアが逃げたところで文句も言われない気はするが、一応、見張りという役目を全うすることに決めたので、最後まで遂行することにしたのである。
 鼻歌を歌いながらイタリアは久しぶりだろうシャワーを浴びている。
 イタリアのことだからゆっくりのんびりシャワーを堪能するかと思っていたが、予想に反してイタリアはそそくさと出てきてしまった。
 意外に思いながらも、ドイツはバスタオルを渡してやる。
「服はそこだ」
 脱ぎ捨てられていたイタリアの軍服は丁寧に埃を払われ畳まれていた。
「几帳面なんだねぇ、お前って」
 しみじみとした口調で言われても嬉しくない。
「悪かったな、いちいち細かくて」
 頬が紅潮するのを意識しつつ、ドイツは仏頂面で顔を背ける。
「ええ? 悪いことじゃないよ! 俺、そういうの駄目だから本気で尊敬するよ!」
「もういいから、黙って服を着ろ! さっさと下に戻れ!」
「怒鳴らなくたっていいじゃないか…」
「べ、別に怒鳴っているつもりは…!」
「お前がプロイセンたちに怒られない内に地下に戻るね!」
「こら! 先に行くな! というか、ちゃんと服を着てから歩けー!」


 イタリアを地下牢に戻し、鉄格子の入り口に鍵を掛け、それからドイツはそのまま片隅に置かれた簡素なベッドへと身を横たえた。
「え?」
 上階に戻ると思っていたものだから、イタリアは思わず間抜けた反応の声を上げてしまった。
「何だ?」
「え? いや、そ、そこで寝るんだ…?」
「……見張りだからな。ただ軽く仮眠を取るだけだ」
「へへへへへ…。そっか。ここにいてくれるんだ。お前っていい奴だな…」
「ただの見張りだと言っている!」
「…うん。でも、ありがとう…」
 怒鳴り、そのままの勢いで起き上がったドイツは、鉄格子の向こうで膝を抱え込み蹲るようにして眠ろうとするイタリアの姿に言葉が出なくなる。
 昼間の馬鹿みたいに脳天気な言動との落差は何だと言うんだ。
 抱え込んだ両膝に顔を埋めて、イタリアは泣いているようにも見えた。
「………」
 本当に、このイタリアという奴は理解が難しいな。
 小さく呟き、ドイツはイタリアに背を向けるようにして身を横たえ目を瞑った。




 戦いは、ドイツ・オーストリア側の敗北で終わった。
 ドイツ国内で起きる各王国へ向けての革命という名の動き。帝国の分解。
 それはドイツだけではなく、オーストリアやロシア、トルコなどでも起きていた。欧州で帝国という存在が消えていった。
 今まで以上に重く伸し掛かる重圧。これらを、ドイツ一人で支えないといけないのだと分かっていた。
 王国の滅亡、プロイセン参謀本部の解体。これらにより、兄のプロイセンは一時的に体調不良に陥った。
 消滅という現象に恐怖していただけに、体調不良程度で持ち堪えてくれたプロイセンや他の元・王国たちの姿に、本気で安堵のため息を澪してしまった。

「ドイツー! ドイツー! 俺のところ仕事無くてさ、お金も無くてさ、何でも良いから何でもするからさ、何か仕事ちょうだいー!」

 迫り来る凄まじい額の賠償金に頭を抱えているドイツの元へ再びイタリアの脳天気な声が訪れてくれたのは、突き抜けるような青空の広がる昼下がりのことだった。

「そんなもん、こっちにだってあるかー! 帰れー!」

 疲労倍増だと本気で思った。そして、またしても、押し切られるのだろうとも。








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10.12.12

本家第1話が初対面なら、その前に結ばれた独墺伊三国同盟の時はドイツはその場にいなかったのかなぁということで、それを勝手に補完してみようとしたはずが、よく分からない展開のまま終わった感じです。
実にすみません。

神ロ≒独 という感じで。限りなく似てるけど完全に同じではなく、されど全く違うわけでもなく。


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