プロイセンが消滅しない理由を考えたらこんな話になった。壁崩壊の話。
史実臭いようで、ただの妄想です。市民がわんさか出てきます。 ご注意を。

 

 

 

 

 

静かなる…

 

 

 

 

 

『「11月10日から、ベルリンの壁をのぞく国境通過点から出国のビザが大幅に緩和される」政令が政府首脳部の審議を通過』

『東ドイツ国民はベルリンの壁を含めて、すべての国境通過点から出国が認められる』

『この政令は、いつから発効されるのですか?』
『私の認識では、直ちにです』


 これは、上司の立て続けの交代劇で混乱しきっていた政府内で起きたミス、だろうか。
 しかし、なんと混乱と誤解を招く言い方をしたものか。これらが、故意になされたものかどうか。

ニュースキャスターの声が速報を伝えている。
『午後6時より始まった記者会見において、国外旅行の規制緩和が発表されました。党によると、出国は西ドイツ、西ベルリンの何処を通っても可能との事です』


 プロイセンは夕食にパンを囓りながらテレビから流れるニュースを見詰めていた。
 情報戦はかなり早くから始まっていた。ドイツたち(今は西ドイツと呼ばないといけないのか?)西側の者は常にスパイを送り込んできていた。東側もスパイを西へと送っていたが、おそらく西側の方が遙かに数が勝っていたのではないか。
 プロイセンは、その数をほぼ把握していたが、この数年は上司への報告は一切行わなかった。上司が気付くべきことで、いちいち言ってやる義理はない、そんな気分になっていただけだ。
 言わなければ、本当に最後まで気付くことがなかった上司達。政権を維持することで精一杯だったらしい。
 実を言えば、上司に見付かることなくプロイセン個人のスパイを幾人か西側に潜り込ませていた。目的はただの情報収集と弟の動きを把握しておきたかっただけだったが。
 おそらく、弟・ドイツはプロイセンの放ったスパイの存在にも感付いていたのだろう。しかし、彼はわざと放置したと思われる。プロイセンの上司が送り込ませたスパイは全て逮捕していたが、プロイセン個人による者達には一切の手出しはされていない。
 そんなドイツの行動を甘いなぁと思いつつも口元が緩みかけるのは、仕方がないか。

 プロイセンは、この狭い国土に閉じ込められて以来、国政に一切の口出しをして来なかった。産業や外交などの仕事はこなして来たが、内政には口出しはしなかった。ロシアはそれを求めていたし、上司達もプロイセンが健在であってくれればそれで良いというように、多くは求めなかった。なので、お望み通りに大人しくしてやっていたというところだろうか。
 それ以外の時はぶらぶら散歩するか、家でクーヘンでも作るか、東側に残った知識人たちと談笑しに出掛けるか、それだけだった。
 特権階級の権限を良いように使わせてもらった感じでもある。

 国土を分断され、家族と引き離されたままになった者達も多く、そして、ロシアの管理下に置かれた政治形態。その中でこの国の者達がナチスの根源だと言わしめ闇に葬ったはずのプロイセンの名前を口にし始めたのは、いつ頃からだっただろうか。
 軍服は初期の段階からプロイセン時代のデザインを踏襲していたし、なんだかんだで「祖国プロイセン」を手放そうとはしなかったこの国の民たち。
 意地でもドイツであろうとし続けた者達。最後までロシアに染まることなく、ドイツであり続けようとしていた者達。
 結局、政治は一党独裁のまま腐敗の道を歩んでしまったが、それでも、この国の者達は必死に生きてくれていた。

 さて、そんな健気な者達をどうやって守ってやれるだろうか。すでに国の力など無きに等しい自分に。

 プロイセンは、コーヒーを啜りながらテレビ画面に視線を戻した。
 テレビが映し出すのは市民たちの姿。
 記者会見の模様を見た市民たちが検問所に向かって集まりだしている。ニュースで言っていた内容が本当なのだろうか?という半信半疑の思いから集まり始めた群衆は、次第に自らの手で自由を求める声へと変わっていっていた。
 検問所へ詰めかける人数が増えるほど、市民たちは自由を、解放を、と口々に叫び始める。
 厳しい監視体制下に置かれてきた国民たちは、怒りと悲しみと僅かでも希望を持って騒ぎ立てる。

「さすがに、数が増えてきてるな」 
 今現在の映像を流し続ける報道番組を見詰めながら、無意識にそう呟いていた。
 やり方を間違えば、暴動が起きる。
 さて、どうしたものか。

 最後のパンの一切れを口に放り込み、プロイセンはテレビを消して立ち上がった。



 ベルリンの大通りはすでに群衆で溢れていた。
「百年は無理だろうって言われてたのにな…」
 群衆を見詰めながら、プロイセンは堪えきれない笑いを零す。
 向かうのは検問所とは逆の方角。
 細い道を歩き、住宅街を進み、その家へと辿り着く。
 ドアベルを鳴らせば、東側に閉じ込められてから親しくなった初老の男が顔を出し、プロイセンを見て驚いた顔をしてみせた。
「この様な時分に、如何されました?」
「この事態に関して、あんたの意見を伺っておこうかと思ってな」
「私の意見など…」
「あんたの意見は聞くに値するだろうよ。この東ドイツに武力行使をさせずに来たのはあんたの功績が大きいんだろ?」
「私の言葉にどれほどの力があったというのか。結局、私もただの特権階級を利用した者に過ぎません。武力に走らなかったのは、国民たちの意志ですよ」
「謙遜っていうらしいぜ、そういうの。日本風に言うと」
「勿体ない言葉を。革命を起こしたければ、それは平和的で静かな革命でなければ意味が無いとは言い続けてきましたが、言うのは簡単です。それを聞き届けた市民こそが素晴らしいというもの」
「知識人なんて謳われる奴は言うことが違うねぇ。あんたの地位だと、好きに西側に移れたものを、敢えてこの国に残り続けてきたってのに」
 プロイセンは男を面白いものを見るような目で見遣った。
「俺は嫌いじゃないけどな」
「勿体ない言葉です。私は、ただ、ここが居心地がよかっただけですよ…。特権階級を利用していただけです」
 男は微苦笑を浮かべて、そう呟いた。
 プロイセンは、家の中に入ることなく、玄関先で話を続けた。中へ入ってくれという男に、すぐにまた出掛けることになるから構わないと断りを入れていた。

「…ゲートを開けるのは、難しいでしょうね。情けないことに上層部が責任逃れを始めている。検問所の軍人たちは対応しきれずにまごついているだけです。ここで、誰かが銃でも持ちだしたら一気に暴動を引き起こしかねない。そうなれば、今まで耐え抜いてきたことが全て水の泡です」
「そうなるか、やっぱ」
 男は、プロイセンの目的を、欲する言葉を理解していたのか、数瞬だけ考える素振りを見せ、そして真っ直ぐに視線を向けてきた。
「…今、この時に、あなたの立場を利用することをお許し願えますか?」
 そんな言葉は出来れば口になどしたくなかったのだろう。男は悲しそうな口調で言う。
「開けさせていいのか?」
「窮地に立たされているゲートの警備の者たちを助ける意味もあります。撃つなと言われていても、追い詰められれば市民に銃を向けかねないでしょう」
 苦渋に満ちた声だった。
 感情の読めない表情で男を見詰めていたプロイセンが、唐突に笑い出した。その声は、何とも楽しげだ。男は一瞬、驚いたようにプロイセンを見詰め、それから、その笑い声に釣られるようにして少し嬉しそうに微笑んだ。
 プロイセンは玄関口から一歩後ろへと下がった。
「それじゃあ、久しぶりに国の大事に関わって来るか」
 軽く会釈してみせれば、男は恭しく頭を下げる。
「どうか、くれぐれもお気を付けて」





 夕方過ぎ、東ドイツのニュースが伝えてきた壁際での混乱の映像を目にした瞬間、ドイツは仕事も何も放り出してベルリンへと向かっていた。
 高速をぶっ飛ばし、短時間で到着した後は、車を停めてひたすら走った。
 メイン通りを走り抜け、フリードリッヒ通り検問所へと辿り着く。ここを西側の者達はチェックポイント・チャーリーと呼んでいたか。
 検問所を挟んだ向こう側の喧噪が気になるようで、こちら側にもすでに人々が集まり出していた。
 壁の向こうから聞こえてくる、東側の住人たちのざわめき。
 幾つかゲートはあるが、半ば無意識にここに来ていた。来るとすれば、ここのような気がしたのだ。このフリードリッヒ通りのゲートに。

 やっとここまで来た。思わず、そう呟く。

 ゲートは開くだろうか。

 ドイツは、ただ静かに西ベルリン側から壁をゲートを見詰める。
 壁の向こう側で「開けろ、通せ!」という声が響き始めている。
「西ベルリンに行くだけじゃないか! すぐに戻るのに、なんで通せない!通行可能って言ってただろ!」
 期待と不満が爆発寸前に感じられた。危ない、かもしれない。どうか、暴動だけは…避けてくれ。
 祈るように、きつく目を瞑る。
 騒ぎは大きくなっていく。

 ゲートは、開かれるだろうか。

 誰もが、口を揃えて、東西の分断が終わるには百年は掛かる。気長に行くしかない。そう言ってきた。
 しかし、ドイツは無理と言われても百年も待つ気は無かった。
 そんな長い時間、待てる訳が無かった。国である自分たちにとって、百年など長いとは言えないのだろうが、ドイツを守るためにその存在を歴史の闇に埋めた兄を、このような形で狭い国土に百年も閉じ込めておく気など始めから無かった。
 必ず取り戻すと、別たれたあの時から心に誓ってきた。
 この四十年余り、形振り構わずに突っ走って来たのだ。
 約束通り、決して武力行使に出ることなく、国を立て直して経済力を高め治安を回復させ、三十年足らずで再び大国へと返り咲いたドイツを、周辺の者達は「奇跡の復活」と褒め称え、そしてその大国故の力を再び恐れもした。
 しかし、ドイツは絶対に武力に頼らず、あくまでも正攻法でここまで来た。
 水面下で東ドイツと接触を図り、経済支援を行い、その不満をフランスなどが言ってくれば東ドイツの分も支払った。
 正面からロシアに抵抗を示し、半ば西側寄りの、オーストリア寄りの立ち位置を獲得してみせたハンガリーに経済支援を約束することで、東ドイツの国民の大量の亡命を成功させた。
 全て水面下で行ってきた。
 ドイツ一人では無理だったが、英雄譚の好きなアメリカがこれもまた水面下でかなり動いてくれたのも大きい。
 後で何を請求されるか、少々恐ろしいが。
 東からの亡命者は今も続いている。
 真綿で首を絞めるように、東側の上司に気付かれることなく、じわじわと追い詰め、国力を削いでいく。それは、ゆっくりと分からないように血を流させているようなものだった。
 このゆっくりと流れ続け、気付いた時には大量出血となっているだろうこの現象が、今は東ドイツにいる兄・プロイセンへの影響として出ないとも限らなかった。もしかしたら、苦しい思いをさせているかも知れないと、恐ろしくなることすらあった。
 それでも、プロイセンは大丈夫だと自分に言い聞かせてここまで来た。
 彼は、東ドイツにいるが、国を完全には背負っていない。東ドイツはあくまでもドイツの一部だという認識を崩さずにいたはずだ。
 ドイツが決して「東ドイツ」という名前を認めず、外国と見なさず、ドイツは一つだと言い続けてきたことは、プロイセンにも伝わっているはずだ。そうだと、信じるしかなかった。
 全ての負担はドイツに来るのであって、プロイセンには行かない。
 そう信じるしかなかった。
 しかし、そうなれば、プロイセンはなぜ国として存在し続けられる。
 国として存在しないのであれば、プロイセンは国の具現化という姿を維持出来ないのじゃないか、そう指摘されたことも一度や二度ではない。
 彼から再び「国」を奪えば、今度こそ、彼の存在は危うくなるのでは…と。考えた事がないはずがない。
 それでも、先の大戦の終わりに言われた言葉を信じ続けて来た。
 オーストリアやバイエルンがプロイセンの特異性について、ドイツに語った言葉を。
 幸か不幸か、プロイセンをこの地上に存在させ続けているのは、ドイツの意志、執着によるものだと。
「プロイセン王国解体指令」が出される以前から、すでにプロイセンという国はドイツ帝国に溶け込み、飲み込まれていた。解体も何も、国という形すらプロイセンは遙か以前に失っていたのだと。
 消えるならば、WW1敗戦後のドイツ帝国分解時に消えている。それでも、プロイセンはプロイセンとして存在し続けた。

『人の思いは何よりも強いと言われるだろう。望まれる限り国は存在し続ける。お前が望む限り、あの男は、呪いのように存在し続けるだろうよ』

 呪いのように…。
 それは、彼を存在を望み続けることが、呪いのように彼を地上に縛り続けるということなのか。
 それでも、今は兄を諦めることなど、無理だった。
 それがとてつもないエゴだと言われても、諦められる訳が無かった。切り捨てるなど絶対に無理な話しだった。
「どうか、無事でいてくれ…」
 両の手を握りしめ、ドイツは日が暮れていく中で壁を見詰め続けていた。
 風が冷たさを増していく。それでも、ドイツはその場から動かなかった。


 深夜に近い時刻になった頃、壁の向こう側でひどく懐かしい声を聞き取った。
「ゲートを開けるから、暴れるなよ! おい、ゲートを開けろ!構わないから通せ!」
 そう叫ぶ声をドイツの耳はしっかりと拾っていた。
 目を凝らし、向こう側のゲートの監視小屋へと目を向ければ、そこの屋根に登っている馴染み深い銀髪の頭を見付ける。
「兄…さん?」
 半ば呆然と呟く。あんな所に出てくるとは思いもしなかったのだから、驚くのも当然だった。
「さっさとゲートを開け。暴動だけは起こさせるな!」
 声はそういっていた。きっと、ドイツにしか聞き取れていない声。
 周囲は喧噪に巻かれて何も聞こえてはいないだろう。
 警備を任された軍人たちが戸惑った返答をしたのだろうか、「プロイセンの許可を得て開けたと、後で文句言われたらそう言っておけ。責任くらいとってやるよ」そんな偉そうな言葉が聞こえる。
 相変わらずな物言いに、ドイツは思わず苦笑いを浮かべてしまった。

 全ては、あっという間の出来事のようだった。
 気付けば、プロイセンはすでにその場所から姿を消していた。



 それから、程なくして、ゲートは開かれた。
 始めは、一人一人チェックをして通していたが、あまりの数に完全にゲートを解放してしまったようだった。
 どっと東ベルリンから市民たちが西ベルリンへと雪崩れ込んでくる。

「開…いた…」

 西側でも歓声が上がった。

 別のゲートもすでに開かれたと、情報が伝わってくる。

 開いた。ゲートが、全てのゲートが開かれた。

 後はもう、お祭り騒ぎどころじゃなかった。
 誰彼構わずに抱きしめ合って踊り狂っていた。

 そんな様子を見詰めたまま、ドイツはしばらくの間、動けなかった。この日を待ち望んできたはずなのに、涙も出ない。頭が真っ白になった感じだった。

 どこからとも無く音楽が聞こえて来ることに気付く。その音色に引かれ、音の発生源を探し辺りを見渡せば、壁の側でチェロを奏でる男がいた。その周囲に楽器を持った人々が集まって来ている。
 奏でられる音楽は、ベートーヴェンの交響曲第九番。
 その音色に強張っていた体から力が抜けていくのが分かった。

「壁を、国境を、崩せた…」

 やっとだ。やっと、再統一への突破口を作れた。一世紀どころか、半世紀も掛からずして、再統一へと繋がる突破口を作ったのだ。
 膝がガクガクと笑っている。
 考えてみれば、自分はここで何時間、こうして立ったままだったのか。
 動こうとして、よろける。そのまま両膝から崩れるようにして座り込んだ。
 いっそ子供のように泣けたら良かったのに、とそんなことを思う冷静な思考を意識しながらも、ドイツは座り込んだまま動けないでいた。

「ヴェスト!」

 ゲートから出てきたプロイセンが愉快そうに駆け寄ってくるのが見えたが、ドイツは立ち上がることも出来なかった。

「やりやがったな。色々と無茶しまくりやがって」
 懐かしいプロイセンの高笑いが聞こえる。
 どっちが無茶をしているんだ、と思うが声が出て来ない。
 頭がじんじんと痺れていくようだった。意識が遠退きそうだ。半ば呆然と見上げれば、当然ながらプロイセンがいた。
「兄さん…」
「おい、お前大丈夫か? 何か反応しろよ」
 後ろに撫で付けた髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱される。
「兄さん」
「おー。お前のお兄様だぜ」
「兄…さん」
「ぐあぁぁぁぁ! お前、ちょっと、力加減ってものを…!!」
 衝動のままにプロイセンを抱き寄せ、そして抱きしめた。力任せに。
 悲鳴が聞こえたが、そんなことに気遣ってる余裕などない。
「ヴェスト! マジで俺様の小鳥のような体が、折れる! 折れるって!」
 バシバシと頭やら背中やらを叩かれたが、構わずに抱きしめ続けた。というか、力の抜き方が分からなくなっていた。
「ヴェスト…、マジで勘弁、しろって…」
「兄さん…!」
 プロイセンの苦情を聞き流したまま、ドイツは腕の中の存在に縋り付いた。
「ずっと…」
「…あ?」
「この四十年、多くのプロイセン出身という人々に会ってきた…」
「へぇ…」
 何を言い出してるんだ? と思いつつも、プロイセンは必死に少しでも楽になろうとドイツの腕の中で藻掻いている。
「戦後からの始めの二十年くらいは、あなたの名前を口にすることも出来ない状態だった」
「だ、だろう…な。っつうか、ホントに、ヴェスト、力を抜けって!」
「それが、後半の二十年に入ってくると、多くの国民たちが、全てでは無いけれど、多くの者達があなたの名前を口にし始めた」
「あー。こっち側でも、そういう現象起きてたわ。民族性まで否定された気分に陥った時に、縋るものが、欲しかった、だけだろ」
 言いながら、抱き締めてくるドイツの腕から逃れようと藻掻き続けるが、やはりびくともしない。 こんな状況で、現在の力の差を思い知らされる。自然、自嘲的な笑いが零れる。
「始めに、その動きは東ベルリンで起こったんだ。それが、いつしか西ベルリンにも広がってきた。この街の者達は、特に、あなたへの思いが強い」
「それは、嬉しいね…」
 返答も段々となおざりになっているが、ドイツは構わずに話し続けていた。
「俺はプロイセン軍人を名乗る者、プロイセン生まれだと言う者たちに会って話を聞いてきた。人間たちの目から見たあなたというものを俺は知らないと気付いて」
「また暇なことを…」
「皆、ドイツという国を語るのに、俺ではなく俺の後ろにいるプロイセンを見詰めながら話すんだ。誰もが、俺の後ろにあなたの影を、見付けるんだ」
 プロイセンはドイツの腕から抜け出そうと藻掻くのを止めた。そして、ゆっくりと自分で乱してやったドイツの髪の毛を指先で梳いた。

「俺の名前が重いか、ヴェスト?」

 その言葉に、ふとドイツの腕から力が抜ける。その隙に、締め付けから抜け出すことに成功したプロイセンは、本当に痛そうに腰をさする。
「あなたの名前が、重い? まさか」
 やっと正気に戻ったかのような声だった。今までのどこかぼんやりしたものではなく、はっきりとした力強い声。
「あんたの一人や二人、抱え込んでも俺は何ともない。それだけの力を付けてここまで来たんだ」
「俺は一人しかいねぇよ」
 どうでも良い突っ込みを入れてしまった。
 ドイツは今更にプロイセンの頬に触れ、じっとその顔を見詰める。
「兄さんは…」
「うん?」
「その、……」
 消滅を、解放されたいと望んだことは無いのか、などという言葉は喉元につかえて出てくることは無かった。
「どうした、ヴェスト?」
「すまない、兄さん…」
 それでも、今はまだ、この手を離せないでいる。
 ずっと戦いの最前線を駆け抜けた人だ。これからは、少しくらい楽しく過ごす時間があってもいいのではないのか。
 いや、それを望んでいるのはドイツ自身だろう。そうあって欲しいと、プロイセンが存在する理由をこじつけているだけなのだ。これこそ、ただのエゴというやつかもしれない。それでも、どうか。
 どうか、今しばらく、この我が儘に付き合って欲しい。
 祈るように、ドイツはプロイセンの手を握ったまま顔を俯けた。
「何を謝ってんだよ。意味分かんねぇぞ。って、泣いてんのか?」
「兄さん…!」
「だから、抱き付くのは止せ!」
 反射的に再び抱きしめに掛かったドイツの顔を押さえて止めてしまった。物凄く恨めしい顔で睨まれた。
 その背後で、人集りが割れていくことに気付く。誰かがこちらに向かって走ってきているようだった。
 それは、ひどく懐かしく感じる声で自分の名を呼んでいた。

「ドイツー! プロイセンもいたー! 兄ちゃん!いたよ! こっちだよ!」

 脳天気な声が広場に響き渡る。しかし、そのほとんどが喧噪に掻き消されていく。
「おお! イタリアちゃん! 久しぶりー」
 プロイセンはドイツから手を離すと、駆け寄ってきたイタリアに抱き付こうとしたが、華麗なステップで回避されてしまう。
「ええええ? イタリアちゃん、それはあんまりだぜ」
「ドイツー! 無事で良かった! 俺、ベルリンの騒動をテレビで見て飛んで来たんだよ! そしたらね、高速の入り口で兄ちゃん達と会ったんだ! みんなびっくりして集まって来ちゃったんだよ!」
 イタリアはまだ座り込んだままのドイツに飛び付きながら、口早に喋りまくった。プロイセンの抗議など黙殺も良いところだった。
 いきなり兄と引きはがされる形になったドイツは状況が飲み込めていないようで、イタリアの背中を宥めるように撫でながらプロイセンを見上げる。が、プロイセンは「イタリアちゃーん」と嘆いてるだけだった。
「……」
 なんだ、この状況。
 そして、プロイセンの横に立つ男達に気が付き、ドイツは少々意外そうな顔をする。
「フランス…と、スペイン」
「ハァイ。いきなりだったねぇ。お兄さんもびっくりだったよ」
「ほんま、やるときは何でも派手やなぁ、おたくら。嫌いやないけどな」
 フランスは座り込んだままのドイツに手を差し伸べ、立ち上がらせる。ドイツはイタリアを張り付かせたまま何とか立ち上がった。
 それを見たフランスが、さすがに形の良い眉を僅かに顰めてみせた。
「イタリア、ちょっと離れてなさい」
「ヤダ。ドイツってば、ここんとこずっと忙しくてやっと久しぶりに会えたんだよ! もうちょっとハグしたい」
「まともな話も出来ないでしょうが!」
「ヤダってば」
「俺を挟んで喧嘩せんでくれ」
 そう言って、ドイツはイタリアを引きはがし地上に降ろしてやる。
「ヴェー、ドイツはいじわるだー」
「あー、もう。お前達はいきなり来て何なんだ」
「ドイツが心配で来たに決まってるじゃんか!」
「…あ? 心配…? そ、そうなのか…。心配、なのか、これは…」
 心配してもらうことに未だ慣れないらしいドイツは戸惑ったように呟き、イタリアは哀れみに近い眼差しを向けてしまう。
「ドイツって苦労性だよね…」
「一番の原因は黙ってなさい!」
 言う端からフランスに頭を叩かれた。
「ひどいよ、兄ちゃん!」
「イタリアちゃんを殴るとは、許せねぇな」
 プロイセンが後ろから抱き付いてきたが、今度はイタリアは拒絶しなかった。
「プロイセンも、本当に元気そうで良かった。俺、ずっと心配してたんだよ」
「ありがとな、イタリアちゃん」
 そう言ってイタリアの髪の毛にもふもふと頬を擦り付けている。
 と、そこを今度は更に後ろから引き剥がされた。
「うおっ」
「よう。ほんまにお前さんはしぶといやっちゃなぁ」
 振り返れば、スペインがプロイセンの襟首を持ってイタリアから引き剥がしてくれていた。
「何しやがる。俺様の幸せを邪魔するとは許せねぇな」
「お前ばっかイタちゃんにベタベタすんなや」
「お前はいつでも出来るだろうが! 俺様はまたしばらく会えないんだぞ。ちょっとくらい幸せに浸らせろ」
「え? プロイセン、またどっかに行っちゃうの? 何で? だって、これで二人は元通りじゃ…?」
「イタリア…」
 フランスがそっとイタリアを静止する。
「兄ちゃん、どういうこと?」
「国境が排除されて、東西ドイツの行き来は自由化されたけど、まだ再統一された訳じゃないんだよ。まだ、二つのドイツは別々の国として存在しているんだ。再統一させるために、これから動いていくことになるんだよ」
「ヴェー。なにそれ!? 何でそんなめんどくさいの!?」
「それが国ってものなの」
「俺、そういうの、やっぱりよく分からないよ…。何でだよ…」
「なんでお前が泣きそうな顔をしているんだ。これは俺たちの問題であって……ぐあっ」
 言いかけたドイツを黙らせたのはフランスとプロイセンだった。
「空気は読めるのに、なんで人の機微には疎いんだろうね、この子は」
「ヴェスト、イタリアちゃんの優しさはきちんと受け取っておけよ」
 いきなりの子供扱いに、ドイツは唖然としたまま動けなくなっていた。
 それでも、遅かったようで、イタリアが大粒の涙を零してドイツに殴りかかってきた。
「ドイツはバカだよ! なんで心配してくれるみんなの気持ちが分かんないのさ!」
 ぽかぽかと殴られても痛くもないので、ドイツはされるがままだ。
 困ったように、周囲を見回すが、誰も助けてくれそうになかった。自業自得らしい、これは。
「あー、その、イタリア。すまなかった。本当に心配してくれていたんだな」
「そうだよー」
 ヴェー!と大泣きを始めるイタリアとそれを受け止めるドイツ。取り残されたようにプロイセンたち三人は間抜けな感じで突っ立っていた。
「なんやの、この疎外感…」
 スペインがそうぼやいたとき、群衆を掻き分けて「プロイセンさん!」という呼び声が響いた。
 小柄な人影が、必死にこちら側に向かって走って来る。
 黒髪で和服を着た男だった。

「日本か!?」
「うわぉ。なんで日本がおんねん!? 時差っちゅうもん知っとるん?」
「あらま、日本まで来ちゃったんだねぇ」

 群衆にもみくちゃにされてすっかり乱れた和服を整えながら、日本はぜぇぜぇと肩で息をしていた。
「なんで、ドイツさんのとこの人は、こうも、皆さん、大きいのですか…。窒息するかと思いましたよ…」
「お前、いきなりどうした? 何があった!?」
 日本の姿に驚いたプロイセンは、日本の細い肩に手を置いて軽く身を屈めて問い質すように聞いた。
「何があった、じゃないですよ! このスットコドッコイ!」
「ぐはぁぁ」
 いきなり日本から強烈なボディブローを打ち込まれ、プロイセンは悶絶する。
「体小せぇくせに、お前のパンチ…重すぎ…」
 体を折り曲げ、苦悶するプロイセンの襟元を日本は掴み上げる。
「ちょっと、日本!?」
 日本とは思えない荒っぽい仕草に、フランスが驚きの声を上げていた。
「もう、悲しみと驚きが大きすぎて、怒り倍増ですよ!」
「意味分かんねぇー!」
 襟元を掴まれたままのプロイセンが悲鳴に似た声を上げる。
「日本、どうしたの?」
「落ち着け、日本。とりあえず、兄貴を離してやってくれないか?」
 イタリアとドイツまで日本を取り囲み始める。
 それでも、日本は掴んだプロイセンの襟元を離そうとはしなかった。
「ずっと…、ずっと心配していたんですよ。あなたは、外交の仕事に顔を出してくれないから、私はあなたの安否を自分の目で確かめるなんてことが出来ないままで…。イタリア君から、プロイセンさんは元気だと聞かされてたいましたが、それでも、不安で…」
「あー…、悪かった、な。心配させたみたいでよ」
「心配なんてものじゃないですよ…!」
 泣き崩れそうな勢いで、日本はプロイセンにしがみつく。
「……お前、本当にどうしたよ」
「戦後、あなたの名前も存在もが歴史の闇に葬られて。あなたと出会い、あなたから学んだことすらも全て間違いだったと、そう決めつけられ。全てが無かったことにされて…! 私はあなたから多くのものを学んだのに…! それを全て否定されて…! こんな悲しいことがありますか…!」
 ずるずると力なく膝を折る日本を、プロイセンの腕が支える。
「ニュースで、ベルリンの壁の前での騒動を目にして、居ても立ってもいられなくなって、文字通り、飛んできてしまったんですよ…! そしたら、なんか、壁が壊されてるし! 何で壁壊してるんですか!? 何が起きたのかも、さっぱり分からないし…!」
 日本は、ゆらりと立ち上がると、プロイセンの腕を掴んだ。そのまま、何故か背負い投げに切り替えた。
「!?」
「ちょっとぉぉぉ! 日本、なにやってんの!?」
 悲鳴を上げてくれたのは、フランスだけだった。
 見事に綺麗に背中から落とされたプロイセンは、地べたに寝ころんだまま呆然となっていた。
「もう、私も何が何やら分かりませんよ! なんでいつも私だけが一歩遅いんですか! 欧州はあまりに遠くて…。本当に腹の立つ!」
 両手で顔を覆い、日本は大粒の涙を零す。
「いや、あの…、泣きたいの、俺なんだけど…」
 プロイセンの情けない言葉に、フランスが手を差し伸べてやっていた。
「なんや、よう分からんのやけど、少し落ち着かん? どうせこのお祭り騒ぎは夜明けまで終わらへんやろ」
「そうだね。このまま、飲みに行くっていうのはどう? ドイツ、この辺で良い店ない?」
「良い店も何も、この状況下ではまともに営業されてないと思うんだが」
「だよねぇ…」
 興奮した東西のベルリン市民たちが暴れ回り、街は破壊されまくっていた。
 何とも居たたまれない沈黙が落ちる。
「と、とりあえず、こんな状況だし、探せば一件くらいまともに営業してくれてる店もあるんじゃない?」
「あー、それなら、俺の家が近いぜ。東側だけどな」
「お。それ、ええやん。俺ら「外国人」が入るのは元々問題無いんやし。プロイセンの家に行こうや! 俺、プロイセンの家に行ったことないで」
「ただし、酒が無ぇ」
「……駄目じゃん」
「物資不足なんだよ!」
「じゃあ、俺、買ってくるー!」
 イタリアが手を挙げて買い出しを申し出るが速攻でフランスに却下される。
「だから、こんな夜中に店開いてないって」
「っつうか、お前ら、全員手ぶらかよ。土産は無ぇのかよ!?」
「騒ぎを聞きつけて慌てて来たんだから、土産なんて持ってるわけないでしょ」
「ったく…。何だよ、てめぇらの使えなさ。バナナくらい持ってこいよなぁ。バナナがこっちじゃ高けぇの知ってんだろうが」
「何や、バナナなんかでええん?」
「バナナ! バナナ食いてぇ! 後、コーヒー!」
「そんなもんでええんか…」
「そんなもんっていうな! 手に入れるのも大変なんだぞ」

「ドイツ?」

 何故かぼんやりと破壊されていく街を見詰めていたドイツの背中を、イタリアは軽く叩いた。

「どうしたの、ドイツ?」
「…ああ、すまない。大丈夫だ。……そうだな、飲むなら西ベルリンにある俺の家に来るか。ビールもワインも置いてる」
「なんだ、ドイツもここに家持ってるんじゃない」
「元々、ベルリンに住んでいたんだ。昔のままだけどな…」
 薄く笑いドイツは顔を上げる。

 その目に映るのは、壁の上によじ登り歓声を上げる者、ツルハシやハンマーを持ち出して壁を壊して欠片を持って行く者、好き放題に騒ぐベルリン市民の姿。

「だが、その前に…」
「ん?」
「俺も参加してくるか」
 そう言うなり、ドイツは破壊されていく壁へと向かって歩き始めた。
 ドイツの思惑に気付いたイタリアが面白そうとばかりに後を追う。それに日本が便乗して共に歩き出す。
「壁の欠片、私も記念に貰って帰りましょうかね。売れそうですし、これ」
 日本の言葉にプロイセンは「お前ら…。この壁作り続けるのにどんだけ予算使ったと思ってんだよ…」とぼやきつつも、
「確かに、これは売れるな…」
 と愉快そうに笑った。

 市民たちに混じって、一緒に頑強に作られた西側の壁によじ登りハンマーで叩き壊していく。
 奏でられる音楽は途絶えない。チェロだけだった音が、気が付けば、幾つもの楽器によって共にベートーヴェンのメロディを奏でている。
 一つの街を分断した壁。そのまま世界を二つに分けることになった見えない壁。
 時代が、大きく動き出していた。
 待つのは安寧ばかりではないことは分かっていたが、今は時代の変換期に立ち会うことを楽しもうか。





「兄さん」
 まともに上層部からの命令が来ないまま、独自の判断で動いてしまったことに疲れと憂鬱な顔色を見せている警備兵たちの様子を見に戻ったプロイセンの後を、ドイツは追った。
「バカやりすぎる連中が出ないように見てやっておけよ」
 そう声を掛ければ、苦笑と共に敬礼する警備兵たち。
 明日には、クビだろうか。そんな不安もあるのだろう、皆、陰鬱な表情だった。

「ゲートを勝手に開いたって? 大丈夫なのか? 明日にはクビになんじゃねぇの?」

 皮肉めいた言葉にぎょっとして振り返れば、イギリスの姿があった。各国のメディアがテレビ中継をしている現在、イギリスがいてもおかしくはないが、このタイミングでその発言をしてくれるのは、実にイギリスらしい。
 透かさず、プロイセンが容赦なく蹴りを入れていたが。

「安心しろ。俺が責任取ってやっから。他のゲートの連中にも伝えておけ」
「俺の方からも、ゲートの警備兵に責任は無いと伝えておく」
 プロイセンの言葉に続いてドイツもそう付け加える。
 敬礼し、数人が監視小屋に駆け戻って行く。それを見届けてから、プロイセンはイギリスに向き直った。
「てめぇ! 何しに来やがった!?」
「壁壊してるっつうから見に来てやったんだよ、バァカ!」
「とっとと帰れ!」
「べ、別に、ゲート開放を祝いに来てなんかいないんだからな!」
「祝ってねぇだろ、てめぇ!」
 取っ組み合いの喧嘩でも始めそうな二人の間に入り、ドイツは咳払いを一つ。
「あー、その、今から俺のところで飲もうという話になっているんだが、イギリスもどうだろ…」
「ああらら、坊ちゃんまで来たんだ」
「げ、フランス!」
 ドイツの言葉を遮って来たのはフランスで、当然のようにイギリスが過剰反応を見せる。
「なんで、俺がお前らなんかと飲まないといけないん…」
「坊ちゃんはもう帰るってさ。さあ、そろそろみんなで落ち着かない?」
「か、帰るなんて言ってないだろ、バカァ!」
「めんどくさい奴だな…」
「分かった分かった。イギリス、お前も一緒に飲むぜ! 俺様が特別に許可してやる。有り難く思え!」
「誰が、クソクラウツの家で――」
「ほら、坊ちゃんは帰るってさ」
「帰るとは言ってないだろ!」
「本当に面倒臭い奴だな…」






 今尚、壁に沿っての騒ぎは続いている。
 その喧噪を聞きながら、ドイツは庭先へと出てきていた。
 プロイセンの無事が確認出来ただけでも、本当に良かった。そう思い込む。家の中ではフランスたちがビールにワインに好き勝手に飲みまくってくれている。
 ドイツは泥酔するまで飲む気分にもなれず、こうして一人で庭先に出てきてしまっていた。

「お兄様を置いてどこに行く気だよ」
「兄さん…」

 バナナをもしゃもしゃ食べながらドイツの側にやってくるプロイセン。

「朝が来たら、色々と対応に追われそうだな…」
「そうだな。こんな大騒ぎだ。後片付けが大変そうだ」
「掃除の心配かよ」

 面白がるような口調で言うが、ドイツの返事はなかった。
 そのまま沈黙が落ちた。

「お前がいてほしいっつうなら、俺様はもうちょっと居座ってやるぜ?」
「…!?」
 ぎょっとした顔でドイツがプロイセンを見る。愉快そうな顔つきのまま、プロイセンはドイツの頭をわしわしと撫でまくり、そのまま強引に自分の方へと引き寄せて抱き抱えてやった。
 そうすると、縋り付くようにドイツの手がプロイセンの背に回る。その肩が微かに震える。
 泣いている、のだろうか。声を押し殺したまま、ドイツは泣いているのか。
 そんな弟を抱き寄せたまま、プロイセンは静かに夜空を見上げた。

 賑やかな騒ぎ声は、まだまだ止みそうになかった。

 もう少しだけ、この世界に居座ることを許されるだろうか。
 この東の市民たちを無事に西と融合させた後も、居座りつづけることを。

 静かに、祈るように、ドイツを抱き締める腕に力を込めた。

 

 

 

 




----------------
10.2.20
ドイツのプロイセンへの依存度が高い…。すみません。
これに繋がってくるWW2の話があるんですが、それよりこっちが先に仕上がってしまったですわ。

まあ、一度は書いてみたい題材の、東ドイツ革命と壁崩壊の話を書けたので満足か。




戻る