黄昏にまみえる・3

 

 

 

 

―― 私を殺してくれ。これ以上の罪を重ねる前に。















 切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるとこをいう。
 主人格がそのストレスに耐えられないと判断した際に現れるとされる。
 交代人格が現れている時のことを、主人格は記憶していないことが多い。記憶の抜け落ちと呼ぶ。
 喜怒哀楽それぞれを担当する人格が存在するケースも見られる。
 主人格が記憶していなくても、交代人格の中に必ず記録係りの人格が存在し、そちらが全ての記憶を把握しているケースも存在している。


 解離性同一性障害。多重人格。


 一般にそう呼ばれるもののデータだ。

「なんか、しっくり来ねぇな…。当てはまるものもあんだけど、なんか違和感が残んだよな」
 脳内会話どころか、同時に二人が表に出てきて体の主導権争いをしているのを何度も見た。
 同時に表に出てくるというケースもなくもないのだろうが、なんというか、こういう一般人のケースにサガは当てはまっていない気がしてならなかった。
 ぶっちゃけ、医者に診てもらえというのが正しいのだろうが、それを黒いサガが許すはずがない。
 それこそ内側からサガの心を殺しにかかる可能性が無いと言い切れないのだ。

―― 俺たち聖闘士が、すでに人としての枠からはみ出た存在だからか?

 聖衣を拝領し、アテナの聖闘士となった時より人であることを捨てている自分たちに、一般人と同じ解釈など存在しないのかもしれない。
 崖から落ちたくらいでは死ねない頑丈な肉体。
 体を命を守る小宇宙を操る時点で、まず、自殺など不可能に近い。死にたければ、己の首を落とすか心臓を抉り出すかでもしないと不可能なのだろう。
 とはいえ、心臓を打ち抜かれて尚、戦い続けた聖闘士の話しすら残っているので、それすらも怪しいかもしれないが。
 真に死を望むならば、アテナの聖闘士として戦いの中でしか死は有り得ないということか。

―― 聖闘士の寿命は短いと言われてる割に、随分と頑丈なもんだな。

 冷めた笑いがデスマスクの口元を掠める。

 優しかったサガ。
 優しく、そして強かった。
 それは、アイオロスにも言えたことだが、サガは優しさと穏やかさが先に目に留まるのだ。物憂げに眉を寄せ、困ったように微笑する。
 これで聖闘士として戦えるのかと思うものもいたようだが、これが戦闘に入ればとてつもない大技で一撃でやられてしまうのだから、本当に凄まじい。
「アイオロスの謀反」と共に聖域から姿を消した双子座のサガを探す者は今尚いた。
 アイオロスと一緒に謀反を起こしていたのではないのか、そんな噂さえ持ち上がってしまうほどに。
 冥王の動向を探る為に聖域を離れている、そんな話を流しても広まりはしなかった。
 まだ幼さの残るミロやカミュたちもサガの不在を不安がっているのは分かっていた。
 黄金聖闘士の筆頭格だった二人が揃って消えたのだ。不安がるなと言う方が無理なのだろう。

 誰よりも優しかったサガ。誰に対しても優しかった。
 いつも静かに笑んでいた。そして、常に何かを憂いていた。
 サガの憂いは、いつだって双子の片割れカノンを思ってのことだとは知っていた。

―― 結局、今いる黄金の中でカノンの存在を知るのは俺だけか。

 アフロディーテやシュラたちがカノンの存在を知る前に「アイオロスの謀反」は起き、事実上サガは聖域から姿を消してしまっている。
 シオンもいない今、もう、誰もカノンの存在を知り得ることはないのか。
 誰にも知られずに、カノンは消えてしまうのか。
 その事実がまたサガを追いつめているような気もしていた。



『デスマスク。こちらへ参れ』
 不意に頭の中に声が響く。小宇宙を使って直接脳内に話しかけてくるのは教皇だ。
 その声に問い返すこともなくデスマスクは教皇宮に赴くことを了解する。
 黄金聖衣を纏い白いマントを羽織り、静かに十二宮の階段を上っていった。

「蟹座のデスマスク、参上しました」
 教皇の間の扉を開け、静かに中へと足を進めた。教皇の座す前で片膝を付け一礼しようとして、デスマスクは顔を強ばらせる。
 右前方に見える姿。デスマスク同様に聖衣を身に纏ったシュラが黙したまま立っていた。

―― くそぅ…。またシュラを使う気かよ。

 忌々しげに教皇に鋭い視線を向けかけ、デスマスクは顔を逸らすことで表情を消した。
 シュラは姿を見せたのがデスマスクだということを確認しただけで、大して興味も無さそうに視線を戻す。

―― シュラは使い勝手が良いってかよ。

 舌打ちしたいのを何とか堪え、いつもの人を食ったような笑みを唇の端に乗せた。

 教皇から発せられた勅命は、「反教皇派を唱えだした者たち」を徹底的に叩き潰すこと。聖域内に蔓延る汚職、腐敗の全て洗い出すことだった。
 シオンですら近年は苦労していたと思われる古い聖域のシステムを、一気に壊してしまうつもりか。
 水面下で起きた教皇交代劇の直後にも、シオン直属だった官吏たちは一斉に排除されているが、それを大がかりに本格的に行っていくのか。
 その為に、デスマスクとシュラが行うべき仕事は、邪魔となる要人たちの暗殺となる。

「こんなもんは、俺一人で十分っしょ」
 デスマスクはそう教皇に向けて言葉を放つ。教皇のマスクを付けたサガの表情はこちらからは伺えない。
 シュラが僅かに視線を向けてくるのが分かるが、気付かない振りをした。
「ほう…? それはずいぶんな自信だ、というところか?」
「アフロディーテが見目や技の華麗さから裏方は似合わないのは分かりきっている。が、俺まで不要とはどういう了見だ?」
 サガの感情の籠もらない声を押し退け、シュラがデスマスクを振り返り怒気を含ませて言葉を投げつけてくる。
「自信っつうよりも、シュラの拳もまた見事過ぎて誰の仕業か分かりやすいって話。暗殺は俺の領分でしょうが」
 暗殺の度に誰がしましたって名乗ってどうするんだ、と揶揄するように付け加えて。
 後暗いのは俺だけで十分だ。
 サガが僅かに頷くのが見えた。
「では、山羊座のシュラには、西方で起きている暴動の鎮圧を申し付ける。市民の保護と、暴動に関わる者の全てを抹殺せよ。政府からの要請だ。遠慮なくやれ」
「…!」
 くっそ…!
 デスマスクは内心で呻く。聖闘士ではなく、ただの人間を聖闘士の力で殺せだと?
 これ以上、シュラの手を聖闘士としての戦い以外で汚させたくはないのに。それをどうにか回避させたかったはずなのに。
 結果、後暗い事はデスマスクに回せても、表立って動く殺戮の道具にシュラは駆り出されることになったのだ。
 サガの方が何枚も上手だと分かりきっていたが、それでも、どうやっても敵わないことが心底もどかしい。
 もうこれ以上、シュラを壊さないでくれ! シュラから光を奪わないでくれ!
 そう叫べたらどんなに良かったか。
 仮面の下で黒いサガは笑っているのだろうか。デスマスクの無様な足掻きを。

 シュラは、教皇の命を無表情のまま一礼して受け取っていた。





 一人、二人。
 今日も静かに命を刈り取っていく。
 ただの急死に見える死体を作り上げたり、謎の死のまま死体を遠く聖域の外で発見させたり。
 決して、教皇と彼らの死が繋がることが無いように立ち回る。
 昼間は、聖域内に根強く蔓延る不正の数々をアフロディーテ、シュラと共に暴き出していった。
 突つけば次から次へと出てくる、腐りきった今までの政の姿。
 サガが精神をすり減らし犠牲となったこの聖域のシステム。
 なるほど。ここまで腐敗が進んでいるのであれば、一度壊してしまうのもいいだろう。
 反論をさせない力でねじ伏せて。
 これには反対はしないでやるよ。そう心の中で呟く。

 いつしか、シュラは戦闘絡みで外に出て行き、アフロディーテとデスマスクは教皇と共に聖域内の仕事をこなしていく。そんな形が出来上がりつつあった。
 シュラが遠征から戻れば巨蟹宮に集まり、軽く宴会騒ぎで気を晴らした。下の双児宮は無人、上の獅子宮のアイオリアは今はまだ幼く、置かれた状況が状況だけに半ば引き籠もっており文句を言うこともない。
 巨蟹宮の位置、巨蟹宮の死仮面のせいで滅多に人が寄り付かないということから、人目を気にせずに好き勝手に振る舞い過ごせた。
 その死仮面も居住スペースには存在しないし、デスマスクの意志で簡単に払うことも可能だった。
 それに気付いたアフロディーテが巨蟹宮で過ごすことを最初に提案したのだ。
 ついでにデスマスクはイタリア生まれなせいなのか、食へのこだわりは半端なかった。
 かなり前から、聖域で出される食事はまずいと自分で料理するようになっていたので、巨蟹宮には常に食材も置かれているのだ。腹が減ればデスマスクに作らせれば楽でいい、というのもアフロディーテの発言である。
 面倒臭がり屋の割には食へのこだわりだけは譲れないらしく、まずいものを食わされるくらいなら俺が作るわ、と毎回二人に料理を振る舞うことになってしまっている。
 これもデスマスクには良い気張らしのようで、不満が出たことは一度もなかった。

 力任せに行う暴動の鎮圧などは年下連中には回したくなかった。そのため、シュラ一人で重い時はデスマスクやアフロディーテも遠征に赴いた。
 まだ幼い彼らに俗世に汚れた仕事をさせたくなかった。彼らには聖闘士らしい仕事だけさせておけばいいと、無意識に願う感情が存在していた。
 ただのエゴで、ただの自己満足だと分かっていても、願わずにはいられなかった。きっとサガやアイオロスならそうするだろうし、事実彼らがそうやってきていたことを知っていたからだろうか。

 教皇による近辺の村々の視察には、ほぼアフロディーテが付き添った。時にデスマスクも同行したが、その時は従者のような出で立ちで同行した。
 どうにも蟹座のデスマスクがにこやかに村の子供に笑顔を振りまく、という絵面を作りたくなかったらしい。
 アフロディーテは蟹座の黄金聖衣を装着したデスマスクが子供に混じって遊ぶ光景を思い描いただけで、それはもう遠慮なく爆笑していたので、この判断が間違いではないと思うことにした。
 二度ほどシュラも同行したが、教皇の「神のような人柄」に半ば呆然としていた。おそらく、自分に暗殺などの仕事を申し付けた人物と同じと思えなかったのだろう。
 村への視察を行うのは完全にサガの時だけだった。黒いサガは聖域外には無頓着な面があった。聖域を守ることがそのまま世界を邪神から守ることと考えていたのもあるのだろうか。
 事実、アイオロスが連れ出したアテナという名の赤子は最後まで見つからないままだというのに、そのアテナを探すことさえしようとはしていない。
 アテナはどこかで生きている。そうデスマスクとアフロディーテは確信していた。
 それは聖闘士としての直感なのかもしれなかった。







 雨が五日も降り続けたことがあった。
 シュラは相も変わらず、無政府状態が続く地域での内乱の鎮圧などに駆り出されていた。
 大国が後ろで絡んでいるせいで国連すら介入出来ない深刻な状況だと聞く。市民によるデモから始まり、自由と平等を求めての声は暴動へと化した。しかし、クーデターも結局は制圧され不発に終わり、政権を握る軍部は問答無用で反抗する市民を虐殺していった。
 それでも他国が介入出来ない状況。後ろにある大国対大国という構図が巻き起こす悲劇。
 国内のあちらこちらで爆撃や銃撃が続き、市街地でのゲリラ戦が深刻化していると耳にした。
 犠牲になるのは、いつだって力無き子供たちだ。
 シュラは、どちら側の人間の抹殺を命じられているのだろうか。
 少しだけ、そこが気になっていた。

 正義など人の数だけ存在する世界。
 私利私欲で生きる人間、利己主義に生きる人間、利他的な考えに幸福を見つける人間、それぞれに言い分、正義の定義が存在している。
 正義を押しつけた時点で、争いは始まる。それが人の紡いできた歴史。

 シュラは、誰を抹殺するよう命じられたのか。


 雨が降り注ぐ中、デスマスクは巨蟹宮の柱に寄りかかり外を眺め続けていた。
 帰還したシュラをすぐに見つけられるように、暇があればこうして雨の降る十二宮を眺めていた。

 シュラの小宇宙を感じ、デスマスクは凭れていた柱から身を起こす。
 目を凝らすように、階下へ続く階段をじっと見つめた。
 激しく降り注ぐ雨の中、白いマントを赤黒く汚した山羊座の聖衣が見えた。おそらく聖衣も血で塗れていたのだろうが、この雨で流れ落ちてしまったようだ。
 そう思えるほどに、シュラの姿は尋常ではなかった。
 返り血も避けることなく、斬ったのだろうか。
「シュラ!」
 巨蟹宮へと足を踏み入れたシュラを抱き止める。そこで初めてシュラはデスマスクの存在に気付いたらしかった。
「デスマスク…。どうした? こんな雨の中、外へ出て」
 遠くを見つめるような眼差しでシュラは呟く。
「シュラ。大丈夫か?」
 そんなシュラの肩を掴み、デスマスクは問いかける。
 シュラは不思議そうに小首を傾げた。
「俺が負けるとでも思ってたのか?」
「そうじゃない。お前は、大丈夫なのかって聞いてんだよ」
「……」
 焦点の合わない眼差しで、シュラは巨蟹宮を見上げる。
「シュラ」
「デスマスク…。たくさん、子供を葬ってきたんだ、俺。破損した体を治すことも出来ないまま、圧政に苦しむよりも今ここで楽にしてやる方が子供たちの幸せだって…聞かされた」

 ずぶ濡れのシュラの体を引き寄せる。感情が凍り付いたように、シュラからは何の反応も返って来なかった。

 アフロディーテに小宇宙で知らせ、デスマスクはシュラを引きずって居住スペースへと連れ込んだ。
 聖衣をはぎ取り、下に着た服を脱がして浴室へと放り込む。
 熱めのシャワーを出し、シュラへと掛けてやるが、シュラ本人は無反応のままだ。

―― ちくしょう。わざとこんな役目をシュラに回したな。

 聖闘士が赴くような事柄じゃないと初めから思えていたのに。なぜ、止めれなかったのか。
 無駄だと分かっていても、後悔せずにはいられなかった。
 もうまともに生きれない子供たちに、最後の慈悲としてその命を摘み取る願いを聞かされて。
 その願いを、この男は律儀に聞き届けたのだろう。
 心が悲鳴を上げ、壊れるのも構わずに。

 熱めのシャワーを浴びても微動だにしない体を抱き寄せその背中を撫でる。
 服を着たままのデスマスクは自分もシャワーのお湯でずぶ濡れになるのも構わずに、シュラの冷えきった体を抱き締め続けていた。
 掛けるべき言葉など、何も浮かばなかった。

「デスマスク! シュラは!?」
 アフロディーテの声が聞こえる。
 デスマスクは、シャワーを止めるとシュラにバスローブを着せ、頭からタオルを被せて浴室から追い出した。
「シュラ!?」
 シュラの様子にアフロディーテが声を上げている。
 シュラをアフロディーテに任せて、デスマスクは自分も濡れた服を脱ぎ、新しい服に着替えていった。




「ほらよ」
 ブランデー入りのホットミルクを入れたカップをシュラの前に置く。アフロディーテと自分の分も同様にテーブルへと並べた。
 ソファに座らされたシュラは、微動だにしない。
「シュラ…。温もるから飲みな」
 そう囁き、アフロディーテはシュラの手にカップを持たせる。それでもシュラは動かない為、アフロディーテはカップを持たせたシュラの手ごと包み込み、カップをシュラの口元へと運んでやる。
「少しでいい。飲みなよ、シュラ」
 優しく囁き、ゆっくりと口に付けさせる。
 カップが口に当たればシュラも僅かに唇を開き、その中の液体を受け入れる。
 少しずつ流し込まれるホットミルクをシュラの喉が嚥下していく。
 半分ほど飲んだところでシュラが自分からカップを置いた。隣に座るアフロディーテに小さく礼を言うのが聞こえる。

 今までずっと息を潜めていたかのように、シュラはゆっくりと呼吸をした。そのまま体の力を抜きソファに身を沈める。ゆるく目を瞑りもう一度大きく息を吐く。

「何だか酷く疲れた…」

「そう」

 シュラの呟きにアフロディーテは短く答えながら、その頭を抱き寄せ自分の肩へと凭れ掛けさせる。幼い子供にするような仕草だが、デスマスクも敢えて突っ込むような真似はしなかった。
 それほどにシュラは憔悴しきって見えた。

「眠い…」
「少し眠るといい。しばらくここにいてやるから」
「そんなに、子供では、ないぞ…」
 アフロディーテの優しい声音に、シュラの思考も緩んでいくようだった。シュラは途切れ途切れに言葉を発しながら、瞼を落としていく。数分もしない内に、完全に体から力が抜け落ち、アフロディーテにその身を預けてしまう。
 さすがにデスマスクも小さく呆れたような驚きのような声を発した。

「お前、何? 保母か? 催眠術師か?」
「せめて保父さんじゃない?」

 突っ込むのはそこか。

 デスマスクの戯れ言を流しながら、アフロディーテはソファから身をずらしていく。シュラが苦しくないように、そっと横たえてやる。
「シュラは何をしてきたの?」
 シュラが起きないことを確認しながら、アフロディーテは声に怒気を含ませて小さく問いかけてきた。
 デスマスクは自分の知る情報をアフロディーテに知らせてやるだけだった。シュラの今回の任務の内容を。
 最終的に子供たちの始末をつけてきたという任務の。
「なんてことを…」
 アフロディーテは呟きと共に両の手で顔を覆った。彼の怒りと嘆きは尤もだといえた。
 先の無い子供たちの苦しみを断ち切ってやることが、正か否かは別にしても、そんなことはその国の民が判断し行うもので、関係する近隣の政府が介入してやるべきものだろう。
 一般社会という場から切り離された存在である聖闘士に託して、どうなるというのか。
 聖闘士は女神の聖闘士であって神ではないのに。

「神経が疲弊していくほど、ごちゃごちゃ考えることをしなくなる、のか…」
「こうなることも予測してのシュラの任務だったと?」
「…あの教皇は、シュラを使いやすい手駒にしたいんだろ? 俺は言うことは聞くが思い通りには動かないって思ってんだろうな。そんな感触はある」
「私は端から、サガの勅命かサガを守る為の勅命しか聞かないからな。なるほど。じわじわと壊してシュラを手中に納めたいって腹か」
 デスマスクは天井を見上げ、小さく息を吐き出す。
「さあて、どう動くかな…」
 その呟きにアフロディーテは傍らに眠るシュラの真っ直ぐな黒い髪を撫でながら、唇を噛んだ。
 考えを纏めようが無かった。

「本当は何をすべきだったかなんて、分かりきってんだけどな」
 自嘲気味に言うデスマスクの声に、アフロディーテが強い眼差しを向けてくる。デスマスクはその眼差しに「分かってるよ」と笑って返した。

 分かっているのだ。何が正しくて何が間違っているのか。何が最善の選択だったのか、分かりきっていた。ただ、それを選び取ることなど二人には到底無理だったのだ。
 ずっと間違え続けている。このまま間違え続けていくのだろう。それ以外に道など見出せないまま。
 そのせいで、シュラが壊されていくのを見つめながらも、守りたいと願うせいで間違いを犯し続ける。



 シュラはしばらく聖域内での待機が続いた。遠征も任務もしばらくはシュラに回って来ないようだった。
 デスマスクが裏で何やら取引でもしたのだろうか。アフロディーテはそんなことを考える。






 その日、デスマスクはスターヒルにいた。
 すでに教皇シオンの結界は存在せず、サガも敢えて結界は張っていなかったようだ。簡単に入り込むことが出来た。
 神殿内に入り、誰かが横たわる祭壇へと近付く。
「シオン…」
 呟き、苦笑が澪れる。
 祭壇の周囲、ここにだけ結界を張ったのかサガは。本当に、あの男はどうしようもないなと、苦笑が澪れる。
 錯乱状態にあったサガは、何を思ってここに結界を張ったのか。
 あれから一年以上が過ぎたというのに、結界内にあるシオンの亡骸は腐敗していなかった。
 まだ死後数時間程度に見える姿で横たわっていた。胸に大きな穴を空けて。
 手刀で心の臓を貫かれたのか。
 一撃で終わったのだな。当時の様子が傷跡から伺えるようだった。
 シオンを技を使うまでもなく、たったの一撃で葬ったサガの凄まじさを感じ取り、デスマスクは無意識に肩を竦めていた。

 今更シオンの亡骸を探しておいて、どうにかしようなどと考えてもいなかった。ただ、何となく確認しておきたかっただけだった。
 確認したところで、何をするわけでも無いのに。
  「これなら、まだもう少し大丈夫そうだ。…悪ぃな、シオン。もうちょっとだけそこで待っててくれ」
 そう呟き、デスマスクはスターヒルを後にした。


 小宇宙を絶ち、気配を絶って動いているつもりだった。
 誰もいないアテナ神殿から教皇の間へ、教皇の間から教皇宮の暗い通路へと出ようとした。
「どこへ行っていた、デスマスク?」
 背後でそう声を掛けられ、デスマスクは驚愕に目を見開く。
 いつから、この黒いサガはいた?
「どこへ行ってたと聞いている」
 圧倒的な小宇宙。足が凍り付いたように動かない。
「どうした、デスマスク?」
 背後に立つ教皇のマスクを付けたサガを、何とか首を動かし見つめ遣ろうとした。
「…ガッ、は、」
 サガの手で首を掴まれ、デスマスクの体は壁に容赦無く叩きつけられる。
「お前は本当によく働いてくれている。実に使える奴だよ。しかし、どうしてこうも、思い通りには動いてくれぬかな?」
「さあ…? どうして、だろうな」
 首を絞め上げられながらも、デスマスクは人を食った笑いを浮かべてみせた。
「まあ、いい…。いずれ分かるか」
 そう言うと、興味が失せたというようにサガの手が外れた。
 床に落下し、デスマスクは痛む喉を押さえ軽く咳き込む。
 どうして、サガは途中で止めたんだ?
 不可解に思いながらデスマスクはサガを見上げた。その視線に応えるかのように、マスクを取りながらサガが振り返る。
「え? サガ?」
 申し訳なさそうに微笑むサガの姿があった。
「サガ! あんた、無事なのか!?」
「それはお前に言うべき言葉だ、デスマスク」
 身を屈め、床に座り込んだままのデスマスクに視線を合わせてくるサガの姿。
 気遣わしげにデスマスクの首に手を触れてくる。
「すまないな」
 その言葉にデスマスクは眩しげに目を細めた。随分と久しぶりに会うサガだった。

 デスマスクに無体を働いたことを嘆くサガに「今更気にすんなよ」と言いながら笑った。
「今更か」
「そ、今更だぜ。それにあれはあんたであってあんたじゃない」
 苦しげに笑うサガに気付きながらもデスマスクはそう言い切っていた。
「それよりさ、今晩は時間空かねぇの? 俺が晩飯作ってやっからディーテも交えて食おうぜ」
「晩飯?」
「そ、あんた絶対にまともに飯食ってないだろ。向こうのあんたは好きにやってるっぽいけど」  
 黒いサガがしでかす不始末を、サガは己自身に戻った時に時間の許す限りに取り戻そうと働き続ける。
 それは見ていても痛々しいほどだった。
 黒いサガもそれなりにきっちりと政をこなしているのだが、それ以上に感情のままに振る舞う為、いろいろと問題を残してくれるのだ。
「ディーテは息災か?」
「だから、それもあんたの目で確かめろよ」
 そう言って笑ってみせた。

 小宇宙を通じてアフロディーテを教皇の私室へと呼びつければ、血相を変えて駆け込んできた。
 サガに何かあったのかと思ったのだ。
「え? 何? え? サガ? ええ?」
 間抜けた声を発しながら、アフロディーテは料理の乗ったテーブルに付くサガとデスマスクを見つめる。
 どういう状況か理解が追い付かないらしい。
 それほどに、彼もまた常に気を張りつめて動いていたということなのだろう。そう気付き、サガはより一層彼らが愛おしくまた悲しくなるようだった。

 久方ぶりのサガとの夕食。
 毒を盛られる心配をすることもなく、気楽に食べられる食事。
 ここまで当たり前のことがひどく難しくなっているのだと、今更に思い知らされもし、デスマスクもアフロディーテも泣き笑いのような気分に陥っていた。







 新月の夜。薄雲が空を覆う星明かりも乏しい闇の中、教皇の素顔を暴こうと暗躍していた官吏のグループをまとめて始末し、デスマスクが自宮へと戻ったのは明け方近くだった。
 歩きながら聖衣を脱ぎ捨て、衣服をはぎ取り、浴室へと直行する。手早くシャワーを浴び、体を清めていく。
 こういう日は、体が高ぶって仕方がない。このままベッドへ行ったとて眠れそうにも無く、かといって熱の逃がし方も分からないまま浴室の壁に額を押しつけ、深々と溜め息を吐いた。
「あー。街に出るかなぁ」
 綺麗なお姉さんと遊ぼうか、そんなことを思い描いていた。

 巨蟹宮の入り口にシュラの小宇宙を感じ、デスマスクは俯けていた顔を上げる。急いでバスローブを羽織り、居住スペースと宮との区切りの扉を開ければ、すぐそこにシュラは立っていた。
 全体から放たれる凍り付いた小宇宙。昏い表情。
「おい、何があった!?」
 シュラの手を掴もうとすれば、逆に手首を強い力で握られる。
「いてててっ」
 痛みに抗議の声を上げてもシュラの力は弱められない。
「痛てぇって、おい!」
 シュラはデスマスクの腕を掴んだまま、居住スペースへと入り込んでくる。
「何なんだよ、おまえは!? どうしたんだよ、おい!」
 問いかけても返答はなく、逆にうるさいとばかりに口を塞がれる。手のひらで強い力で。このまま殺されるんじゃないのかと思うほどに強い力だった。

 腹に蹴りを入れるか、殴り倒した方がいいのか、シュラの様子からどの手段で抵抗したものか考えていると、シュラはデスマスクの口から手を外した。

「どうしたんだよ、お前。何があった?」
 言い終える前に今度はシュラの唇でもって口を塞がれる。
「…んぐ」
 あー、そうゆうこと。こいつも誰かを殺ってきたのか。
 体が高ぶって仕方がない、と。デスマスクと同じ状態だったらしいと見当と付け、シュラの後頭部に手を添え口付けを深くし、太股をシュラの股間へと押しつけてやれば、なぜかショックを受けたようにシュラは身を離し、デスマスクを信じられないという目で見つめてきた。
「お前からしておいて、その顔はあんまりじゃね?」
「いや、俺は別に、お前に…」
「俺だって別にお前に恋情なんか無ねぇよ。街で姉ちゃん買うより手っとり早いか――」
「お、おおおお前は、そういうことを…!」
「お前、やってることと言ってること違いすぎだろ。要するに、抜きた――」
「うわあああああ! 止めろ! 言うなああああ!」
「ああああ! うるせえええええ!」
 お互いに大声を張り上げ、耳を塞ぐ。
 それから、デスマスクは「はいはいはい分かりましたー」と投げやりに言い放った。
「お前相手にやりすぎたよ。シュラ君はホットミルクでも飲みますか?」
 その言い方にシュラが露骨に不満そうな顔を作っていた。


「で? 何をしてきたらあんな状態になるんだ?」
「別に」
「おい」
「……」
 バスローブから普段着に着替えたデスマスクは、本当にシュラにホットミルクを出してやりながら軽く睨んだ。
「教皇宮に…」
「あ?」
「教皇宮に忍び込もうとする輩がいたから、斬り捨てた。数が多かったから、少し乱闘になった。それだけだ。周囲には気付かれてない」
「…何で忍び込もうとしてたのか、理由は?」
「知らん」
「…あー、そう。ま、いいんじゃね。どうせ、教皇の暗殺狙ってる連中だろうから」
「………」
 デスマスクの言葉にシュラは少し驚いたような顔をした。
「どうして、教皇は狙われる?」
「教皇だからだろ?」
「……」
 納得いっていないという顔だったが、デスマスクは先のことを考える。
「斬ったやつらは?」
「どうしようか考えたが、分からなくてここに来た」

 やっぱりね。死体処理屋ですかい、俺は。

「じゃ、ちょっくら片づけてくるわ」
 よっこらせ、とおっさん臭いことを言いながらデスマスクは立ち上がると、シュラを残して教皇宮へと向かって階段を上っていった。
 立ち去り際に見えたのは、沈痛な表情を浮かべるシュラの姿。それがデスマスクの神経にささくれたものを残していた。





 いつも通りに反抗を示すものたちの亡骸を隠蔽していく。
 あるものは事故死に見せかけ、あるものは喧嘩にでも巻き込まれたように。

『デスマスク』

 脳内に声が聞こえ、デスマスクは顔を上げる。教皇の間の窓辺に、マスクを外したサガの姿が見えた。
 デスマスクとアフロディーテ以外の前では決して素顔を晒して来なかったサガが、何を考えているんだ。
 デスマスクは心拍数が上がるのを意識しながら、教皇の間へと駆け込んでいた。
「猊下! 何を!」
「デスマスク。先ほどの者たちはシュラが斬ったのか?」
「……」
 どう答えたものか言葉に詰まる。
「私のためか」
「ちが…」
 反射的に言い掛けるが、最後まで否定しきれなかった。

「デスマスク」
 優しい声音。憂いを含んだ静かな声。
「最近、ずっと私のままでいられるんだ」
「え?」
「心が静かでいられる。こんなのは久しぶりだな」
「だから」と、サガは憂いを湛えた笑みを浮かべて続けた。
「デスマスク。私を殺してくれ」
「――…」
 絶句しかなかった。今の流れで、そうなるのかよ。

 分かっていたのだ。
 それがずっと彼が求めていたことだと、知っていた。それでも、そんな選択支など取れるはずもなかった。
「私はいつかお前たちにも手を伸ばす。これ以上の罪を重ねる前に、私を殺してくれ。私が私でいられる内に」
「……」
 分かっていたのだ。高潔で慈悲深い彼がこんな状況を望むはずも無いことは。
「私を殺せるのは、今となってはお前だけだろう」
 そう。サガほどの聖闘士を殺せるのは、積尸気を操るデスマスクくらいだろう。
 決して外れることのない技。積尸気冥界波。その魂を引きずり出し、いつもの黄泉比良坂の入り口に置いて来るなど甘いことをせずに、全力で以て死の穴に叩き込んでやれば、それで終わりだ。最強の聖闘士であっても即死だろう。
 一瞬で終わる。簡単なことだ。
 彼が望む、今となってはただ一つの願い。

「デスマスク」
 サガが、求めて名を呼ぶ。

 デスマスクは、ゆっくりと右手を掲げた。

「積尸気――」

 サガがゆるく笑むのが見える。これで終われると。
 気高く、優しい男だった。それは今でも変わらない。

「冥界――…」

 デスマスクの右手が力無くだらりと下がった。サガが悲しげに微笑し目を瞑った。

 出来るわけがなかった。
 出来ていれば、最初からやっていた。
「俺に、あんたを殺せるわけが、ないだろ…」
 泣きたかった。もう、涙すら出はしないけれど。
「あんたは聖闘士らしく、戦って死ねよ…」

 サガの口元が凶悪な笑みの形を作る。最初は小さく、だが、だんだんと大きくなる笑い声。
「愚かな。最後のチャンスだったものを。自ら無駄にするか」
 その言葉と共にデスマスクの体は吹き飛ばされていた。

―― だよなぁ…。

 他人事のように冷めた思考で呟く自分がいた。

 殺せないなら自分が殺されるだけなのだ。分かっていたことだ。それでも出来なかった。

 ごぼりと口から血の固まりが溢れ出る。

「哀れなことよ。非力な弱者よ」
 サガの声が遠い。
 それでもまだ意識が残っているのは、心臓への直撃は避けれたということか。心臓を抉り取らなかったのは、サガの抵抗だろうか。
 見事に刺し貫かれた己の胸を見遣る。シオンと同じように穴が空いて見える。
 心臓からはずれていても肺を傷つけたのだろう、どす黒い血が口から澪れ出ていく。
 上手く呼吸も出来ない。

「滅びよ――、ぐうぅぅ! 貴様、まだ邪魔をするか! ……デス、私から、離れっ…!」

 血が吹き出るのも構わずに、デスマスクは窓へ体当たりをし、外へと飛び出した。何の受け身も取れずに地面に叩き付けられる。
 よろよろと立ち上がろうとするが、体勢を崩し階段からずり落ちる。そのまま勢いよく転がった。
 双魚宮から続く薔薇に覆われた長い階段。
 魚座と同じく水の宮に属する蟹座は、魚座同様に耐毒体質らしく毒薔薇の影響も受けにくい。だが、それでも今のデスマスクには感覚を奪う毒に違いなかった。
 毒薔薇の香気のおかげで痛みすら麻痺していくようだった。

「サガ…、泣きそう、だった、な…」

 仰向けに倒れ込んだまま空を見上げ、デスマスクはぼんやりと呟く。

「ここで、死ぬわけには、いかねぇ…よな」

 死にたくないなどと口にはしないが、今はまだ死ぬわけにはいかないと思っていた。
 しかし、抉られた胸から吹き出す血は止まりそうになかった。薔薇を血がより赤く染め上げていく。
 出血が酷すぎて、体が急速に冷えて行くのが分かる。

「ははは…。ちょっと、俺、やっぱヤベェかな…」

 もう、指先すら動かない。
 こんなところで、無様に終わるのか?
 サガを守りたいとここまで来ておいて、何一つ見届けることも出来ないままに終わるのか。

「デスマスク!」

 アフロディーテの声がするようだったが、よく分からなかった。

「デスマスク! 小宇宙の異変を感じたから、急いで来てみれば、何だこれは!? 何があった!?」
 揺するなよ。痛てぇだろ。
 ぼんやりした思考でそんなことを思うが、声にはならない。
 アフロディーテの姿を確認しようと首を動かしてみるが、それもやはり叶わず、ただ口からどす黒い血が溢れ出るだけだった。
「デスマスク!」
 狼狽えたアフロディーテの声を聞きながら、デスマスクは意識が遠退くのを感じた。




「なんで…。デス、お前が、こんな…」
 死に瀕した友の姿に、アフロディーテは柄にも無く狼狽える。
 こんな死に方など、デスマスクに一番縁遠いものだと勝手に思っていた。

―― 落ち着け落ち着け。

 震えそうになる指先を握り締め、そう口の中で呟き続ける。

「血を止めないと」
 間違えることなく、真央点を突かなくては。それから小宇宙で傷を少しでも塞いで。
 今すぐにすべき事柄を必死に脳内で組み立てていく。 

「デスマスク…! 死ぬなよ。こんなとこで死ぬな!」
 血止めをし、小宇宙を分け与えるように冷えた体を抱き込みながらアフロディーテは囁き続ける。
「デス。戻って来い。死なないでくれ」 
 サガを守ると、誓っただろ。
 アテナをも裏切っている自分たちには、すでに祈る神すら持ち合わせていないのだと分かりきっている。それでも、祈らずにはいられなかった。これが人の弱さなのか。
 そんな的外れな思考をしてしまう。




 絶たれた神経細胞が繋がる。途切れた意識が再び浮上する。
 暖かいのは小宇宙の温もりか。
 デスマスクは唇の端を持ち上げた。
「ディー。お前、すげぇな」
 アフロディーテが行った処置のおかげで命が繋ぎ留められたことは、おぼろげながら理解した。
「デス…!」
 腕の中で息を吹き返した友の姿に、アフロディーテが安堵の溜め息を澪す。迷い子のように、不安に揺れた瞳をしていた。

 一命を取り留めただけで、完全に回復してないのは分かっていたが、それでも聖闘士である自分たちには十分な状況だった。
 抱き締める腕に力を込め、アフロディーテは傷ついたデスマスクの胸元へ額を付ける。

「デス。もう、こんな…」

 言いかけ、口を噤む。

 もう、こんなこと止めよう。止めにしよう。

 何度も脳裏を駆け巡った思い。それでも、その選択肢を選べずに今日まで来た。こんなことが起きた今でさえ、その選択肢を選び取ることが出 来ずにいる。
 なんと愚かしいことか。
 分かっている。それでも、無理なのだ。

 彼は全てだった。彼は始まりを与え世界を見せてくれた。彼を否定することは、自分の存在と世界を否定するようなものだった。
 彼を否定し失うくらいなら、世界を壊すか自分を壊した方がマシだと思っていた。
 それほどまでに大きく大切な存在だった。
「デス、許してくれ。私はやはり、どうしても…」
「俺も、同じ、だった。出来な、かったわ。悪ぃ…」
 その言葉にアフロディーテは嗚咽を澪した。


 選ぶべきは、ただ一つだったのに。

『サガを討て』

 それが、力を持つ者の取るべき選択肢。

『黄金の総力を挙げて、サガを討て』

 正義を掲げるならば、それが、真に力を示す為の選択肢。
 己が力を正義とすべき、最もな選択肢だった。

 それでも、彼らには最も不可能な選択肢だった。何に変えても回避したい選択肢だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

12.9.28
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蟹から見たサガの話になってきた。
この辺から「悪と呼ばれた13年間」なので妄想炸裂です。

相変わらず山羊座の扱いに悩む。どんだけ原作を読み直しても、アニメを見直しても、「教皇が悪」とは感じてたが「教皇がシオンではなくサガだ」ということは知らないらしいシュラさん。アニメはこの設定になってしまってるが。お前、シオンとも面識無いのか? サガ寄りな思考をしてるなら蟹とディーテと一緒にできるのに。山羊座ああああああ!!

蟹は老師とも面識あるどころか「お久しぶりです」発言してる辺りからも、かなり親しい間柄の時期もあったのかと思える蟹。シオンとも面識あるよなこれ。

シャカはシオンも老師もサガとも面識無さそうだが。あの言動からして。


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